実際に検証して使用感をレビュー
公称スペックだけでは分からない、EVICIV製モバイルモニター「M133E11-J」の真の性能と実用性を明らかにするため、実際に様々な環境で検証を行った。
まず、このモニターは映像ケーブルを接続しているデバイスから映像信号が届かないと、全画面ブルースクリーンで「無信号」と表示される。通常他のメーカーのモニターだと、映像信号を受けないと10~20秒前後でスリープに移行するが、この製品は約1分この全画面点灯状態のまま。1分を経過すると画面が消灯する。

試しにまずはNintendo Switch(無印)とつないでみた。問題なく映像が出力されたので自分の部屋にテレビがない状況でも本体画面よりも少し大きく有機ELできれいな画面でプレイを楽しめそうだ。

次にWindows PC(デスクトップ)にも接続して検証。こちらでは念のためRadeon RX9070とGeForce RTX 4060どちらのグラフィックスカード環境も用意し検証。有機ELディスプレイの画質については、普段使用している液晶IPSパネル搭載モニター(1920×1200)と比較したら一線を画す映像の豊かさ。期待通りの引き締まった黒と鮮やかな色彩でHDR映像を堪能できる。なぜ、液晶パネルでの黒が白っぽく見え、有機ELは完全な黒を表現できるかについては別の記事でも詳しく解説しているが、要するにバックライトの有無等、仕組みが全く違うので有機ELは黒の表現が得意。約1.4万円でこれだけの映像クオリティやはり魅力。

モニターのコントラスト比は公称値で1,000,000:1ということで、一般的なIPS液晶が1,000:1~1,500:1であることを考えればかなり高い。色表現はAmazonの表記のままなら1.07億色表現(8bit+FRC)とのことだがWindows上でHDR設定をオンにすると10bit表示として認識されるようだ。8bit+FRCとは、Frame Rate Controlの略で、簡単に言えば疑似10bitカラー表現が可能であるという意味。RGBで白色を作り点灯し続ければ白のままだが、消灯状態(黒)と交互に目にもとまらぬ速さで点滅したら人間の目に映るとどうなるだろう?極端な解説をするとこういうことで、これによりグレーに見えるため、こうしたLEDの細かい制御によって本来表現できない色表現を実現しているのがFRCの特長。もちろんネイティブ10bitカラーではないため、本格的なクリエイター用途には向かないかもしれない。ちなみに6bit+FRCで疑似8bitなモニターも安価のモニターの中には存在する。

Mac mini 2024(M4モデル)でも接続を試す。こちらではUSB Type-C一本もしくはHDMIどちらでも映像を出力することができた。おそらくThunderbolt端子搭載のMacbookでも同様接続が可能であると思われる。

あまり試すユーザーはいないと思われるが、USB Type-C搭載のiPad ProでもType-C一本で映像出力は可能だった。電源ケーブルがいらないのはうれしいポイント。

デメリット・注意点
HDMI接続時にWindows/Mac両OSともにディスプレイ設定からHDR設定はオンにすることができ、Youtube上でのHDR再生も可能だった。しかしながら単色やグラデーションでドット抜けなどを確認できる下記のサイトで詳細を確認してみると若干表示に難あり。グラデーションの諧調表現不足で縦型ストライプっぽい模様が目立つ。YoutubeでHDR動画再生時には気にならないものの、こうしてみてみると静止画表示の際はかなり気になる…。ちなみにHDR設定しない場合はこのような現象は発生しにくい。この現象はMac OSのディスプレイ設定でハイダイナミックレンジ(HDR)オン時にも発生するためWindows特有の問題であるとも考えづらく、単純にモニターのスペック不足である点を指摘せざるを得ない。

そのため本格的にHDRコンテンツを堪能したい場合は、他の高価でハイスペックモニターを検討したほうがよさそうだ。
また、有機ELといえば特有の焼き付きリスクも考慮する必要がある。しかしそれに関しては長期間使用での評価が必要になるだろう。
少なくとも約4時間ほど静止画を表示させ続けた検証については焼き付きが発生せず、というのもパネル表面を触っても右下部分がほんのり生温かい以外はほぼ発熱していないのであまり心配はいらないかもしれないが、今後実際に長時間点灯状態の検証を続けて状況が変わればアップデートしたい。
まとめ・この製品はおすすめできる?
EVICIV製有機ELモバイルモニター「M133E11-J」は、その価格からは想像できないほどの高画質と携帯性を兼ね備えた、魅力的なポイントも多い製品。特にその軽量性は目を見張るものがあり、500mlのペットボトル飲料よりもはるかに軽い300g台中盤ということで毎日リュックに入れて持ち運ぶのには全く気にならない重量だ。そして有機ELディスプレイの強みである圧倒的な映像の美しさには目を見張る。
一方で今回のレビューで気になるポイントとしては、HDRコンテンツを楽しむには少々スペック不足感が否めないという点だ。コントラストが圧倒的に高く13.3インチというコンパクトでありながら、文字の視認性は優れるというビジネスに必要な要素はすべて備えるものの、両手を挙げておすすめできるかといえば微妙なところ。外観チェックでも触れた通り、品質がいいかといわれれば微妙だし、HDRの表示も微妙だし…。個人的には開封して汚なかったのはふき取りで許せるレベル、HDRもほぼ使わないサブモニター的に使いたいので買って後悔はない。
もしUSB Type-Cケーブル1本で接続できる軽量かつ高画質なモバイルモニターを探しているユーザーで、コスパがよけれバ今回書いたデメリットは許容できる人はぜひ検討してみてほしい。