AMDからRYZEN 7 8700FというGPU無しのCPU製品が発売されたけど、
正直これは買い?
(ZACK IT編集)
用途を選ぶけど正直総合的には買いではないと
当サイトでは判断する。
その理由について解説するよ。
Ryzen 7 8700F概要
AMDから新たに発売された「Ryzen 7 8700F/Ryzen 5 8400F」は、2024年5月29日にGPU非搭載のモデルとして新たに追加された8000シリーズのラインナップ。既に各PC専門店をはじめAmazonなどのオンラインショップでも入手が可能だ。
8000シリーズといえばいわゆるAPUと呼ばれるもので8700G/8600G/8500Gシリーズが読者の中には頭に浮かぶ方もいるだろう。今回発売されたFつきシリーズとGシリーズとの大きな違いは、その高性能GPUが無効化されているモデルである点だろう。
これは、グラフィックス機能が不要なユーザーにとっては一見8700Fの方がコストパフォーマンスが優れたモデルに見えるが果たしてどうだろうか。以下に、Ryzen 7 8700Fと、同じくRyzen 7シリーズの7700Xおよび8700Gとの比較を用意した。
Ryzen 7 7700 BOX | Ryzen 7 8700F BOX | Ryzen 7 8700G BOX | |
価格(2024/6/16時点) | ¥43,980 | ¥48,877 | ¥51,480 |
アーキテクチャ | Zen 4(Raphael) | Zen 4(Phoenix) | Zen 4(Phoenix) |
コア数 | 8 | 8 | 8 |
スレッド数 | 16 | 16 | 16 |
ベースクロック | 3.8 GHz | 4.1 GHz | 4.2 GHz |
最大クロック | 5.3 GHz | 5 GHz | 5.1 GHz |
キャッシュ(L2+L3) | 40MB | 24MB | 24MB |
TDP | 65W | 65W | 65W |
プロセスルール | 5nm | 4nm | 4nm |
付属クーラー | Wraith Prism | Wraith Stealth | Wraith Stealth |
PCI Express | PCIe 5.0 | PCIe 4.0 | PCIe 4.0 |
PCIeレーン数(使用可) | 24 | 16 | 16 |
AI機能 | - | AMD Ryzen AI(16TOPS) | AMD Ryzen AI(16TOPS) |
内臓GPU | Radeon Graphics | - | AMD Radeon 780M |
ネイティブUSB 4 (40Gbps)対応 | - | 2 | 2 |
確かに、8700Gと比べれば若干価格を抑えて発売されたようだが、既に用意されていたラインナップの中に、RYZEN 7 7700というものが存在しそちらの価格が直近だと若干安価なため、正直現在の8700Fの価格だとコストパフォーマンスに関しては懐疑的だ。果たしてこの価格に価値があるのかどうかは次章からメリット・デメリットを解説していく。
8700Fのメリット
RYZEN 7 8700Fは、8700GなどのAPUシリーズとアーキテクチャが共通でPhoenixコアを採用しており、8700G/8600G等の上位機種と同様NPUと呼ばれるAIに特化した演算ユニット「Ryzen AI」を使用することができる。性能を表す単位は「TOPS」。8700Fは最大16TOPSのNPU性能となる。
本来CPUで計算する生成AIのタスクをNPUに割り当てることで効率的にAI処理が可能となり、またCPUの占有率も下がることからこれからAI時代を生き抜くための必須機能ともいえる。従来クラウド上で処理されてきたChatGPTなどの生成AIは今後クライアント上、すなわち自身のパソコン上で処理されるようになるにあたりNPUの存在は不可欠となるだろう。
またMacではThunderbolt 4という規格にて最大40Gbpsのデバイス間通信が可能となっているがWindowsでもUSB4規格により最大40Gbpsが可能となる。勿論ネイティブで対応しているか否かという事なのでマザーボード単位で対応している製品はX670Eなど既に存在する。
8700Fのデメリット
付属クーラーに関しては8700Fは一番最低限のWraith Stealthだ。一方比較対象のRyzen 7 7700はLED付きのWraith Prismクーラーが付属しており、冷却性能も優れる。
APUをベースに製造されている8700Fは8700Gと同様PCIe 4.0対応となり、PCIe 5.0対応SSDなどは使用不可。また、8700Gとほぼ同様の仕様のはずなのだがよく見ると最大クロックが劣る。選別落ち品をGPU無効化して販売されているのだろうか。
キャッシュも今まで述べてきたところと重なるがPhoenixアーキテクチャベースなので7000シリーズとは異なりキャッシュが約半分。高フレームレートを必要とするゲームでの場面や、動画編集などではやはり7700に今一歩届かずといったところか。
8700Fは総合的に見て買い?
さて、今まで述べてきたところをまとめると、付属クーラーは7700からコストカットされ最大クロックもキャッシュも控えめ、加えて8700Gの最も優れたポイントであるGTX1650並みのGPUがカットされ、用意されたメリットがRyzen AIとUSB 4だけ。
価格設定がまだ出始めなのでこなれてきた7700と比較するのは少し無理やりかもしれないが、現在の売り出し価格では買うべき製品ではないというのが本記事の結論だ。
代わりに何を買うべき?
ここまで読んできたのだからRyzen 7 7700なんだろ?と言いたいだろう……。
そうではない。
5700Xを買うのはどうだろうか?
Ryzen 7 5700Xは旧世代ではあるがAM4マザーはまだ市場に供給され続けており、5700X自体も8コア16スレッドというマルチ性能が申し分なくそろっていて2万円そこそこで買えてしまうそのコストパフォーマンスはいまだ自作er人気は根強く、2024年6月16日時点の価格.comCPUランキングでも不動の1位だ。
8700Fを買うくらいであれば、こちらを購入して浮いた数万円でグラボのグレードを上げたほうがゲーミング性能は間違いなく上がりQOLバクアゲ間違いなしだろう。
まとめ
Ryzen 7 8700Fは、その位置づけと価格設定から見て、正直どっちつかずなポジションで中々買い推奨をしづらく最適な選択肢とは言えない。
同価格帯でより高性能なモデルが存在する中、あえて8700Fを選ぶ理由は少ないうえ、コスパピカイチなら旧世代ではあるが優れた性能を持つ「Ryzen 7 5700X」を推奨する。