
最近PC自作に興味あるんだけど、なんか「裏配線マザーボード」ってのがあるらしいね。あれってどうなの?見た目スッキリしそうで良いなと思ったんだけど

(ZACK IT編集)
裏配線マザーボードね。見た目は非常にシンプルでスマートな感じにはなるけど、いかんせんラインナップ不足感が否めないね。
裏配線マザーボードとは?
裏配線マザーボードとは、従来の一般的なマザーボードとは異なり、電源コネクタ(24pin)やCPUコネクタ(4pin)などの電源ユニット経由で接続する各種コネクタがマザーボードの裏側に配置されている製品のことを指す。これにより、PCケース内部のケーブルをマザーボードの表面から見えないように配線することが可能となる。
一般的なPCの自作では、マザーボードの前面に配置されたコネクタにケーブルを接続するため、ケーブルがPCケース内を縦横無尽に走り、見た目がごちゃつきがちである。しかし、裏配線マザーボードを使用すれば、非常にすっきりとしたPC内部にでき、昨今トレンドであるガラスパネルで中を「魅せる」PC構築可能だ。

GPUのBTF対応で補助電源ケーブルを隠すことが可能。
このコンセプトは、長年にわたりPC自作愛好家の間で「見えない配線」として理想とされてきたものであり、それをマザーボード自体が実現する形となり、一部で話題を呼んでいる。
裏配線マザーボードのメリット
まず、裏配線自体は従来のPCケースやマザーボードでも可能であった。単純に基盤の表面に配置されたコネクタに補助電源類を接続しつつ、近くのケーブルホールから裏に回し、再びPSU(電源ユニット)に接続することで極力表に配線が見えないように配置する方法だ。
新しい裏配線マザーボードの最大のメリットは、やはりその卓越したケーブルマネジメント能力にあり。マザーボード表面からケーブルが見えなくなることで、PCケース内部が非常に洗練された印象となる。特にRGBライティングを多用するゲーミングPCなどでは、ケーブルの乱雑さがライティングの美しさを損ねる場合があるが、裏配線によってその問題が解消される。
裏配線マザーボードのデメリット
一方で、裏配線マザーボードにはいくつかのデメリットも存在する。まず、最も顕著なのは、対応するマザーボード製品が極めて少ないということ。また、PCケースの対応も必要になるため、手持ちのケースが使えない可能性も高い。
他にも、価格が高価である傾向がある点もデメリットとして挙げられる。特殊な設計であるため、通常の同等スペックのマザーボードと比較して、価格が高めに設定されていることが少なくない。初期投資が高くなるため、予算に限りがあるユーザーにとっては導入のハードルとなるだろう。またそもそもの問題として、従来でも、煩雑なケーブルを「魅せる」ケーブルに変更する製品自体は存在したわけで、高い金額を払い汎用性を捨ててわざわざ専用品をマザーとケースで用意する必要があるのか?という疑問がわく。
さらに、通常の裏配線でもコネクタ近くのケーブルホールから裏に回すことでさほどケーブル類を目立たなくする組み方は可能で、もちろんMOD PCのようなデザイン性が最重要項目である場合のニーズはあるにせよ、ほとんどの場合一度組んだら細かいところまで見ない一般ユーザーに刺さる製品であるかどうかは微妙なところ。さながらミニ四駆の重量を削るために肉抜きする「オタクの中のオタクさ」さえ感じる。もちろん、好きなことにこだわりぬくことはとても素晴らしいことだ。ゲーム配信でPCが映ったり、PC自体をイベントで展示したりといったニーズにはマッチするため、コンセプトとしては非常に魅力的な製品群であることは確かだ。
裏配線マザーボードは流行らない?
裏配線マザーボードが現状、爆発的に流行しているとは言えない状況にある。その理由としては、前述の圧倒的なラインナップの少なさ、そして加えるなら新チップセットへの対応の遅さだ。現状Amazonで購入可能な裏配線マザーボードはB650やB760チップセットのみ。B650はBIOSアップデートで最新のRyzen 9000シリーズが使えるにせよ、旧ラインナップ感は否めない。メーカーとしても優先的に市場投入するラインアップではないことを示唆しているといえよう。まさに展示会などでアピールされるコンセプトモデルをほんの少しだけ実際の製品化をしてみました的なチャレンジモデル的な位置づけなのだ。
また、GPUの大型化も足かせになっているという印象。いくらマザーボード表面の「無駄」を排除しても結局ゴツイグラフィックスカードが鎮座するほか、CPU冷却のトレンドも簡易水冷であることが相まって結局ホースによってマザボの表面を「魅せる」ことが阻害される。そこに割高な裏配線マザーボードと対応ケースを用意するユーザーが極めて稀であることは想像に難くない。
対応マザーボード一覧
裏配線マザーボードは、まだ市場に出回っている種類は少ないものの、ASUS、ASRock、GIGABYTE、MSIといった主要なマザーボードメーカーが既に製品を投入または発表している。これらの製品は、それぞれ異なるコンセプトやターゲット層を持っており、ユーザーは自身のニーズや予算に合わせて選択することが可能だ。各メーカーの製品は、独自の技術やデザインが盛り込まれており、CPUソケットの種類やチップセットによってもラインナップが異なるため、購入を検討する際は自身のPC構成に合った製品を選ぶことが重要となる。
ASUS
ASUSの製品としては、「BTF(Back To Future)」シリーズが挙げられる。このシリーズは、マザーボードの主要なコネクタをすべて裏側に配置することで、究極のケーブルレスPC構築を目指している。特にROGシリーズなど、ゲーミングに特化したハイエンドモデルに裏配線 マザーボード ASUSの技術が採用されており、パフォーマンスと美観を両立させたいユーザーに強く訴求する。特定のモデルでは、グラフィックボードの補助電源コネクタまでマザーボードと直結する端子を配置するなど、徹底した裏配線設計が特徴である。しかしながら執筆している2025/5/25時点ではZ790シリーズやB760シリーズなど販売終了が目立つ。新チップセットで引き続きラインアップするのかどうか注目だ。
ASRock
ASRockは、2025年初頭に裏配線マザーボード「BMD(バックマウントデザイン)」シリーズの投入を明らかにしているが現状製品として日本国内ではまだ流通していないようだ。
GIGABYTE
GIGABYTEも、他社同様に「STEALTH」デザインというコンセプトで裏配線マザーボードを展開している。GIGABYTEは、当サイトでの現検証環境でも使用しておりデザイン性の優れる白いマザーボードが売り。産業的なデザインではなくモダンでスタイリッシュな設計が筆者もお気に入りポイントの一つだ。「GIGABYTE AORUS B650E STEALTH」もそうしたGIGABYTEの強みを活かしつつ、ケーブルマネジメントの自由度を高めている。
MSI
MSIは「Project Zero」シリーズとして同じく裏配線マザーボードに精力的に展開を行う。ほかブランドと同様最新チップセットでの「Project Zero」はまだ投入されていないようだが、今後に期待だ。MSIはTOMAWAWKシリーズなどユーザーに定評があるシリーズも抱えており、「コスパ&質実剛健」といったイメージが定着している。
対応ケース(一例)
裏配線マザーボードが利用できるPCケースは、その特殊な設計ゆえに、一般的なPCケースでは対応できない場合が多い。マザーボードの裏側にコネクタがあるため、マザーボードトレイに適切な開口部と、ケーブルを収納するための十分な裏配線スペースが確保されている必要がある。
現状、裏配線マザーボードに対応するケースは限られており、多くはマザーボードメーカーが自社製品向けに開発した専用ケースか、パートナーのケースメーカーが裏配線マザーボード対応として設計されたもののみで利用が可能だ。
CORSAIRのFRAME 4000D RS ARGBはマザーボード各社が展開する裏配線マザーボードに対応。ブラックモデルも販売中なので、好みに合わせて選択ができるほか、ARGBファンがフロントに3基搭載で1万円台中盤なのでかなりコストパフォーマンスは高い。
Sharkoonも黒/白の2つラインナップを用意した背面コネクタ対応PCケースを販売する。こちらは今トレンドでもあるピラーレスケースとなっているので、フロントとサイドがガラスパネルとなっており、裏配線マザーボードと相性がいい。ゴリゴリの見た目重視なゲーミングPCを構築可能だ。
まとめ
本記事では、裏配線マザーボードについて、そのメリット・デメリットから、主要メーカーの対応製品について詳しく解説した。裏配線マザーボードは、現状コスト面やラインアップの貧弱さから中々普及までいかない製品群となっているが、デザインを重視して自作ゲーミングPCを組みたいユーザーにとってPCケース内部のケーブルを徹底的に隠すことで、魅力的な製品であることは間違いない。
現状では、PC自作におけるニッチな分野ではあるものの、将来的なPCデザインの方向性を示すものとして、その潜在能力は非常に高いので今後に注目だ。