最近、PCゲームの最新タイトルでフレームレートの伸び悩みが気になっているんだけど。
どのタイトルもフレーム生成やアップスケール前提なことも多いし、それぞれの技術について説明してほしいし、何なら併用できる技術とかあるの?
(ZACK IT編集)
当サイトでも何度かAFMF 2とDLSSフレーム生成の併用に関するトピックを扱ってきたけど今回は更に最新タイトル『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』も含めた検証したから見ていこう。
PCゲームにおけるフレーム生成技術とは?
2024年以降はPCゲームのパフォーマンスを語る上で、フレーム生成は一つのキーワード。
フレームレートはゲームをプレイする上で非常に重要な要素であり、1秒間に画面に表示される画像の枚数のことで、単位はfps(Frames Per Second)で表される。フレームレートが高いほど映像は滑らかになり、ゲームプレイが快適になる。
ただ近年、そのフレームレートが画質の向上などにGPUの素の性能では足りずフレーム生成技術前提のタイトルも増加傾向にある。先日検証した『モンスターハンターワイルズBeta』はまさにそれの代表ともいえる。最適化などを通して今後フレーム生成を使用せずともミドルクラスで平均60fpsを超えるパフォーマンスを出せることが好ましいが今後どのようになっていくのだろうか。
ともあれフレーム生成技術に関してはNVIDIAの技術であるDLSSのバージョンが2から3にアップデートした際にフレーム生成が大きく取り上げられ話題になった。AMDもAFMFでフレーム生成が可能であることに加えFSRのフレーム生成技術を持っている。
DLSS
DLSS(Deep Learning Super Sampling)は、NVIDIAが開発したAIを活用したフレームレート向上技術であり、バージョンによって異なるが現在のDLSS 3では超解像技術に加え、フレーム生成を利用可能だ。もう少し具体的に説明すると、ディープラーニングを用いて低解像度の画像をアップスケールし、高解像度で描画する技術と、フレーム間に新しい中間フレームを生成する技術を組み合わせている。これにより、画質を極力維持しながらフレームレートを大幅に向上させることが可能だ。
例えば本来フルHD(1920×1080)の解像度をネイティブで生成する前に、一旦HD(1280×720)解像度でGPU側で生成し、超解像(アップスケール)技術でフルHDにコンバートすることによりフレームレートを安定的に生成することが可能。ネイティブ解像度より若干画質は劣るとされるが正直動いている映像の中でそれを認識する方が困難なほど現在のDLSSのアップルケール技術は優れている。
そしてフレーム生成では文字通り、通常出力されるフレームの中間フレームを第4世代Tensorコアにより生成することによって倍近くもしくは倍以上のフレームレート向上を目指すもの。
重要な点としてはDLSSはゲームタイトル側で対応が必須である点。DLSS非対応ゲームではこの技術はそもそも使用不可。
DLSS 3対応グラボ
DLSSは、NVIDIAのTensorコアと呼ばれるAI処理に特化したハードウェアを活用しているため、GeForce RTXシリーズのグラフィックボードでのみ利用可能である。
現在のDLSS 3をベースに対応するグラボは最新のRTX40シリーズのみである。
GPU | VRAM |
---|---|
RTX 4090 | 24GB |
RTX 4080 SUPER | 16GB |
RTX 4080 | 16GB |
RTX 4070 Ti SUPER | 16GB |
RTX 4070 Ti | 12GB |
RTX 4070 SUPER | 12GB |
RTX 4070 | 12GB |
RTX 4060 Ti (8GB/16GB) | 8GB/16GB |
RTX 4060 | 8GB |
検証前に結論から言うとDLSS対応のゲームタイトルは要求するVRAMが高い傾向にあるため最低でもRTX 4060 Ti(16GB)以上は欲しいところ。『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』のNVIDIA紹介ページでもベンチマークデータの下限はRTX 4060 Ti(16GB)となっている。実際当サイトの検証でもRTX4060使用で検証しVRAM8GBを使い切っており、本来のRTX4060 TiとRTX4060のチップの性能差以上のDLSSフレーム生成後のfpsに差が発生しており、VRAMのボトルネックについても今後8GBでは不足になるゲームが増える可能性が高い。
FSR
FSR(FidelityFX Super Resolution)は、AMDが開発したフレーム向上技術である。DLSSと同様に、低解像度の画像をアップスケールして高解像度で描画する技術であるが、DLSSと異なり、専用のハードウェアを必要としないため、比較的幅広いグラフィックボードで利用可能でNVIDIA製グラボでも使用可能である。最新バージョンはFSR 3で、フレーム生成技術も搭載。
こちらもゲーム側での対応が必要となる点に注意。『モンスターハンターワイルズBeta』では超解像/フレーム生成いずれも使用可能であった。DLSSとの画質の違いは若干あるものの、フレームレート向上面だけ見ればFSR 3の方がモンハンワイルズでは伸びた印象。もしお使いのPCに搭載したGPUがRTX40シリーズ以前もしくはRadeonであった場合はFSRを使用するのも視野に入れてほしい。
FSR 3対応グラボ
先ほども述べた通り、FSRは比較的幅広いグラフィックボードで利用可能である。AMDのRadeon RXシリーズはもちろんのこと、一部のNVIDIA製グラフィックボードでも利用可能である。ただし、最適なパフォーマンスを発揮するためには、Radeon RX 6000シリーズ以降のグラフィックボードが推奨される。
AFMF 2
AFMF 2(AMD Fluid Motion Frames 2)は、FSR同様AMDが開発したフレーム生成技術である。最大の特徴は、ドライバーレベルで動作するため、ゲーム側での対応が不要であること。その1点においてはDLSSやFSRに勝る。これにより、多くのゲームでフレームレートの向上が期待できる。
ただし、現在のフレームと次のフレームを生成されたのちその中間フレームを生成する為、先述のDLSS/FSRに比べ遅延が増加するとされる。実際バージョンが2になる前のAFMFでは知覚できるレベルの遅延があった。AFMF 2では大幅改善されており、今回検証で使用するようなモンハンや、インディ・ジョーンズなどFPSや格闘ゲーム以外での遅延がさほどゲームの勝敗を左右しないタイトルについては目をつぶれるレベルにまで改善している。
AFMF 2 対応CPU(APU)/グラボ
AFMF 2は、以下の条件を満たすハードウェアで利用可能だ。
当サイトで何度も扱っているAPUシリーズ、8000Gシリーズももちろん対応しておりAPUとしての統合グラフィックス性能を活かす絶好の機会となる。
ゲームのウィンドウモードでは使用できない。フルスクリーンもしくはボーダーレスフルスクリーン(一部モデル)必須。
AFMF 2とDLSSは併用できる?
結論から言うと、AFMF 2とDLSSを同時に有効にすることはできる場合が多い。ただし、ゲームタイトルによって不安定性が増したり、恩恵が少ないもしくは表示されているフレームレートほどの快適さを感じないケースもあり今後さらなる検証の必要性を感じた。
昔から自作PCやBTOパソコンなどを乗り継いでいるユーザーはグラボを差すと内蔵グラフィックが無効化するということを認識がまだあるかもしれないが現在のシステムではそもそもどちらのグラフィックスも使用可能で、そういった意味ではAMD APUの有用性はかなり上がっている印象。(ただしグラボのPCIEレーンがx8になる点には注意…。)
AFMF 2とDLSSを併用した際のデメリットや注意点はある?
まずはAFMF 2使用時は非使用時と比較して遅延が増加する。ただし2になる依然と比較して大幅改善済み。また、素のフレームレートが落ち込むとカクツキや映像の乱れが断続的に出るケースがある。
『モンスターハンターワイルズ』や『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』でも生成前60fpsを切ると正直3D酔いがしやすいような映像のにじみやブレが目立ち、実用に耐えられない場面も。
重たいゲームはフレームレートが不安定になりがちなのでGPUをアップグレードするか一部の設定を下げることでフレームレートの落ち込みを回避する策を講じる必要があることも念頭に置く必要がある。
また、モンハンワイルズBetaで解説した通り、DLSSを有効にした状態でかつAFMF 2をAPU側でオンにするには通常とは違う接続方法が必要になるのでそちらも合わせて読むべし。